こんにちは。hozemiの上田です。保険営業に役立つコラムをお送りしています。
今日は、厚生年金の改正の動きと、我々保険募集人がやるべきこと、考えるべきことについてお話ししたいと思います。
年金制度改革の現状と主要ポイント
昨今、2025年の年金制度改革の議論が活発化し、厚生年金や健康保険、いわゆる社会保険の改正について自民党・公明党の与党と厚生労働省の間で非常に活発な議論が行われるようになりました。
当然ですが「年金保険料を下げますよ」という話ではなく、
- 年金保険料の引き上げ
- 厚生年金の適用対象者の拡大
- そして一番大きな話題、
基礎年金の年金額の引き上げ
この三つがポイントです。
まず現状の整理としてどういった動きがあったのか、どのような議論があるのかについて話していきたいと思います。
①標準報酬月額の上限引き上げ
すでに決定した内容からお話しします。
まず標準報酬月額の上限引き上げが決まりました。
現在の上限は650,000円ですが、
■ 2027年9月から68万円
■ 2028年9月から71万円
■ 2029年9月から75万円
と、段階的に引き上げる予定です。
つまり頭打ちだった部分を750,000円まで引き上げて、保険料をより多く徴収するという話です。
これは簡単に言えば増税(実際は保険料引き上げですがあえてこのような表現をします)です。
②「年収106万円の壁」の見直し
次に「年収106万円の壁」の見直しです。
中小企業における短時間労働者、例えば、パートの方などについて、
【週20時間以上働いていて、かつ月88,000円以上(年間106万円以上)の収入がある場合】
厚生年金への加入義務が生じます。
これは本人だけでなく会社にも保険料の負担が発生するため労使ともに影響があります。
今後は「週19時間以下」「月収88,000円未満」といった雇用形態が主流になるかもしれません。
企業側も保険料負担を避けるため、週19時間程度の勤務に調整するケースが増えると予想されます。
③基礎年金の引き上げと遺族厚生年金の見直し
三つ目は基礎年金の引き上げです。
これは国民年金加入者が対象で、厚生年金の二階建て構造の一階部分にあたります。
問題は、引き上げに必要な財源を厚生年金の積立金から賄おうとしている点です。
2029年の財政検証で基礎年金の給付水準低下が確認された場合、厚生年金の積立金を活用して底上げする方針ですが、短期的に厚生年金の給付額が減少する可能性があります。
また、遺族厚生年金の見直しも検討されています。
特に子どものいない20代~50代の配偶者においては、遺族厚生年金の支給が『原則5年間の有期給付』となります。
尚、この場合年金額が1.3倍になること、今まで受け取れなかった年収850万円以上の配偶者も受け取れるようになること、夫も受け取れるようになること、収入が少ない場合や障害がある場合(障害年金受給権者)などは5年経過後も継続給付が可能など、様々な変更点があります。
これは子なし夫婦のライフプランニングにおいては提案の根幹の部分であり非常に重要なので、必ず押さえておいてください。
各改革による影響の詳細
標準報酬月額引き上げの影響
標準報酬月額が引き上がるということは、年収800万円、900万円、1,000万円、それ以上の人たちの保険料が上がることになります。
つまり日本の高所得層の手取りが減ってしまうということです。
この点はサラリーマンのライフプランだけでなく法人や社長さん、つまり「労使」の「使」側の人件費、つまり保険料の負担にも関係してきます。
保険を扱う我々が、ビジネスとして理解しておかなければならない重要なポイントです。
この話題はみんなが避けたがるテーマかもしれませんが、法人にも個人にも密接に関わってくる話なので、絶対に押さえておく必要があります。
保険料が上がれば当然手取りは減ります。
そうなると我々が販売する保険商品においても保険料の捻出が難しくなるケースが増えるかもしれません。それはしっかり認識しておくべきでしょう。
「106万円の壁」見直しの影響
次に106万円の壁についてですが、これも法人マーケットにも関連する話です。
個人マーケットでも、たとえば「奥さんがパートをしている」などのケースでは情報提供が必要ですし、法人マーケットでは社長さんへの情報提供は必須でしょう。
週20時間以上働くパートさんに社会保険加入を義務付けるという内容なので、おそらく週19時間以下の雇用契約が主流になってくると予想されます。
たとえ時給を少し上げたとしても、社会保険の負担が生じるよりはコストを抑えられるため労使双方にとってその方が合理的なのです。
企業規模要件は、2027年10月から21名以上、2029年10月からは全規模に適用になります。
パート従業員に頼っている業態、つまり小売業や飲食業などは大きな痛手となるでしょう。
基礎年金引き上げの問題点
次に基礎年金の引き上げについてです。
これは非常に深刻な問題で、そもそも国民年金には財源が足りていません。現在でも、国民年金の財源の半分は、税金でまかなわれています。
それなのに、さらに基礎年金の底上げを行うという話が今国会で成立する見通しです。
厳密に言えば2029年の財政検証で基礎年金の給付水準低下が確認された場合、基礎年金を底上げする方針です。
ではそのお金はどこから出すのか?
それが厚生年金の積立金と国庫負担の増額なのです。
厚生年金の積立金を活用することは、現役世代の保険料で積み立てた資金を国民年金の不足に充てる形となり、制度間の公平性や財政規律の観点から議論があります。
もっと分かりやすく言えば、個人事業主の年金を全く関係ないサラリーマンが納めた年金の積立金から流用するというとんでもない話です。
そもそも、国民年金という制度自体が実質的に崩壊しつつある(財源の半分が税金という時点で実質的に破綻している)わけで、それを改革するのでなく全く別の人たちの財布から取ってくるという、規律も倫理もない滅茶苦茶な改正であると個人的には考えています。
さらに人口減少や経済成長の低迷により、積立金が枯渇したり、税負担増が実現しなかった場合、給付水準の維持が難しくなるリスクもあります。
年金制度の根源的な課題と将来の見通し
年金制度は、皆さんご存知の通り、自分が支払った保険料を将来受け取る仕組みではなく、現役世代が支払う保険料によってその時点の高齢者に年金が支払われる『賦課方式』、いわゆる仕送り方式です。
つまり高齢者が増え若者が減っていく日本においては年金支出は増加し続け、支える側が減ることで若者の負担がどんどん増えていく構造になっています。
これはもう人口減少や経済成長の低迷により、制度の維持が困難になるリスクがあることは明らかです。
とはいえ、今の年金受給者の支給額を減らすことは、高齢者層の反発を避けるため政治的に非常に難しいとされており、減額に踏み切ることは現実的には困難だと見られています。
加えて、厚生労働省の考え方や政策意図もありますが、いずれにしても、私は個人的にこの年金制度の維持は人口減少や経済成長の低迷により困難であり、現役世代からさらに搾り取るしかないという局面に来ていると考えています。
今後、政府と厚労省の考えられる対応としては『年金の支給額を減らす』または『支給開始年齢を後ろ倒しにする』ことです。
すでに60歳支給が65歳に後ろ倒しされたという前例もありますし、将来的に70歳への引き上げが議論されており、さらなる引き上げの可能性は十分にあると考えられます。
あくまで私個人の見解ではありますが、年金制度の現状を鑑みれば、給付の減額や支給年齢の後ろ倒しは避けられないのではないかと思います。
保険募集人が取るべき行動
それでは、我々保険募集人がこうした状況下で何をすべきか。
まず、お客様に対してこの厚生年金改革や基礎年金改革の流れを丁寧に説明することです。
そして、
- 社会保険料の引き上げにより支出が増えること
- 106万円の壁撤廃によってパートがいる家庭の収入が減る可能性があること
- 企業の人件費が上がる可能性があること
を伝える。
つまり情報提供を正確に行うことが必要です。
我々のやるべきことは自分の憶測を基にライフプランを提案することではなく、顧客が自身のライフプランを正確に描けるように正確な情報提供をすることです。
その点で重要だと私が考えているのが、社会保険制度が将来的に維持される前提でライフプランを描くのか、それとも制度の持続可能性にリスクがある場合を踏まえて設計するのか。
この前提を、お客様と一緒に考える必要があります。
制度が破綻すると一方的に決めつけて話すのは良いことではありません(私は破綻すると思っていますが)。
しかし将来的に制度が崩壊した際には、お客様の人生設計そのものが破綻してしまうかもしれません。
それはファイナンシャルプランナーとしては絶対に避けたいことです。
とはいえどの程度の制度変更になるのか、いつ変更するのか、あるいは破綻せず今の水準を維持できるのか。これは誰にも分かりません。
(繰り返しますが、私は年金制度が破綻するか、あるいは多くの現役世代の生活が破綻するかのどちらかだと思っています)。
分からない上で、お客様のご意見と自分の考察を擦り合わせて一緒に考えてみてください。
もちろん、「制度が変わったら見直しましょう」という姿勢も一つの考え方ですが、制度に大きな懸念があることをお客様にきちんと伝えた上で話を進めていくことが、我々の責務だと考えます。
社会保険分野への深い理解の必要性
年金や社会保険の領域は非常に難解で、多くの募集人が敬遠しがちです。
私自身も昔は苦手でした。
しかし、だからこそ、ここから逃げずにプロとして取り組むべき領域だと強く思っています。
本当に信頼される募集人、FPとしてお客様から安心して相談を受けられる存在になるためにも、厚生年金・社会保険の分野は避けて通れません。
今回は健康保険の話には触れませんでしたが、第三分野、高額療養費制度なども含め、こちらも今後改正される可能性があります。
厚生年金と社会保険は法人の経営者も非常に目を配っている(人件費、法定福利費)ため、法人へマーケットチェンジしたとしても避けて通れるものではありません。
社保について専門家並みに勉強している社長さんもいます。
この分野について深い理解とアドバイスができれば、個人顧客からも経営者からも厚い信頼を置かれることは間違いありません。


